男に告白された男
そんなつもりは全くないのに、同僚(男)から告白されてしまいました。 会社を辞めるわけにも行かず、彼も辞める気配もなく、 オフィスの5階(僕)と6階(彼)、なんとなく気まずい僕の日記です。
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DATE: 2016/05/06(金)   CATEGORY: 未分類
平和な時代の、ネガティブアプローチ。
4月から新しい部署での仕事が始まり、バタついていました。
またしても、更新が滞っていたましたが、
たぶん、これからもこんな調子です。すいません。

閑話休題。

クリーンであることは、必ずしも悪ではない。
むしろ、クリーンなままサラリーマン人生を終える者の方が多い。
どちらが幸せかと言えばもちろん、知らない方が幸せだ。
ただ、ビジネスマンとしての成長という観点から考えれば、
経験の幅は広い方がいい。
人は多くを、経験から学ぶものだから。

という理屈は、僕にも分かっている。
確かにこの経験から僕は多くを学んだが、
それは今になって言えることで、内示を受けた当時の僕は、
クリーンなままそっとしておいてくれたらいいのに、
というのが、正直な感想だった。

伊原さんは煙草の灰を、綺麗に落としながら言った。

撤退だの合理化だの、この先もうずっとない、なんてことはない。
その時になって慌てるのではなく、平時から備えておくくらいの知恵を、
いい加減、俺たちは学んだ方がいい。

俺たち、というのは、僕と伊原さんではなく、
伊原さんに代表される経営層、あるいは法人全体を指していると考えていい。
つまり、僕に本格的な合理化の経験を積ませることが「平時の備え」であり、
これは次世代人材育成の一環、ということだ。

景気が悪くなったから撤退、ではなく、
常にポートフォリオを点検し、組み直すことが今の時代は求められている。
単純に赤字だから撤退、ではなく、
投資の期間として温存することもあれば、
たとえ黒字であっても、
将来的に成長の余地がなければ、早期に撤退することもある。
以前のように景気が悪いから、という後ろ向きなリストラではなく、
企業全体として成長を持続するための前向きなリストラ、というのが、
この先、増えていくことは僕にも何となく分かっていた。

でも今回のミッションは限りなく、前者だ。
少なくとも、僕のスタート地点はそこだ。
第一、僕が成長するための教材として用いられる、
出向先の企業に、申し訳ないような気がしてならなかった。

煙草一本分の時間と言うのは5分程度のもので、
それほど長い時間というわけじゃない。
けれど、その短い間にも僕の頭には様々な考えが巡り、
その3分の2くらいは、暗い考えだった。
伊原さんは煙草を消すと、ポンと僕の背中を叩き、
「今晩、飲みに行くぞ」
と言った。
その言葉に僕はぼんやり、
しまった、部屋が片付いてない
と、考えていた。
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DATE: 2016/01/12(火)   CATEGORY: 未分類
不条理が、ぜんぶ落ちてくる。
明けまして、おめでとうございます
という言葉が寒々しくなる頃合いの更新ですいません。
長い休暇が終わり、年明けから社会復帰ということで、
年末から体を慣らしてきたのですが、まだ頭が少し切り替わりません。
4月までは試運転みたいなもの、と割り切る腹の黒さも身についたので、
今年はスロースタートで、参りたいと思います。

お前はクリーンだからだ、と伊原さんに言われた時。
別にこれといった他意はなく、
新しい仕事を任された時、とりあえず尋ねてみる項目をひとつ、
何の気なしに、質問したに過ぎなかった。
実際、どうして自分に割り振られたのか、
その理由を深く考えてはいなかったし、
取りたてて疑問を抱いていたわけでもなかった。

にもかかわらず、帰ってきた答の意味が深すぎて、
僕は半ば呆気に取られ、思わず伊原さんの顔をまじまじと眺めた。
伊原さんの方は平然としたもので、
驚くに値しない、といった涼しい顔をしている。

断っておくと、「クリーン」というのは、
懲罰記録がないことを意味するのではない。
失敗や挫折の経験がない、という意味でもない。
不条理であっても、自分が下した判断の反動として生じる、
恨みや憎しみ、妬みや嫉みといった人間の負の感情にまみれる、
そういう、ニュアンスを含んでいる。

経営的に正しい判断であることと、
関係者すべてにとって心地よい決定であることは、
ほとんどの場合、一致しない。
この不一致は、目に見える部分ではなく、
その下にある、人間の感情や人生に現れる。

ビジネスとはいえ、それを動かすのは人間であり、
人間である以上、感情もあれば生活もあり、養うべき家族もある。
たとえば合理化で、希望退職を100人募ったとする。
平均して一人につき家族が二人いたとして、
経営判断の影響は、少なく見積もっても200人に影響する。
さらに時間軸で考えれば、再就職先が決まるまでの期間ではなく、
何らかの形でその後、何十年にも及ぶ可能性もある。
それはもう、バタフライエフェクトとしか言いようのないもので、
特に終身雇用を前提としていた企業や世代ほど、
その影響は止め処もなく拡大し、果てしなく続く。

僕は社会人になって以降、
景気の良い時期と言うのを、ほとんど知らない。
リストラ、合理化、縮小・撤退なんて言葉は珍しくなく、
超がつく優良企業が数1000人規模の人員整理を行うことも、
もはや有り触れた光景になってしまった。

社内の事業撤退なら、僕も担当したことがある。
長年その事業に関わってきた人間にとって、
事業撤退は自らを否定されるのに等しく、当然ながら感情的軋轢もあった。
撤退した後、自らの意思を貫くため退職した人間もいたが、
多くは社内異動で雇用を守られた。
撤退を判断する側も、雇用は会社が何とかしてくれる、
そういう安心感があったからこそ、
大鉈を振るうことにも、ためらいは感じなかった。
今回はその、後ろ盾がない。

経済合理性から考えれば、不条理かつ非論理的でドロドロしたもの。
それが全部、自分に降りかかると実感したのは、
あの喫煙ルームが、最初だったかもしれない。

DATE: 2015/12/18(金)   CATEGORY: 未分類
優しい言葉には、耳を塞ぐ。
屈折しているとはいえ、
実態としての僕と伊原さんの関係すべてを考え合わせれば、
その度合いは、人が思うほど複雑でも深刻でもない。
それは、伊原さんは私情だけでビジネスを動かすことはない、
という、絶対的な事実に裏打ちされた信頼のようなもので、
このあたりの事情を、うまく説明することはできない。

山崎部長が、励ますような慰めるような、
なんとも耳に優しい言葉を並べている。
隣の伊原さんは、この場で言うべきことはすべて伝えたから、
もう、口を挟むこともしない。
僕は目の前に積まれた書類を捲りたくなる衝動と闘いながら、
山崎部長の話を殊勝に聞いている、振りをしている。
そんな僕の内心に伊原さんは気付いているが、
だからといって何も言わず、窓の外に視線を向けていた。
さすがの伊原さんも、居たたまれなかったのかもしれない。

山崎部長の話で記憶に入れたのは、
僕の身分としては100%出向ではなく、50%の兼務出向ということ。
本社での所属は、伊原さん配下のプロジェクトということになる。
伊原さんの下には腹心の部長クラスが控え、
組織図としては、この人が僕の直属上司だが、
マネジメントマネジャーというよりプロジェクトマネジャーなので、
「自分のお世話は自分で」という組織になる。
僕は業務の進捗報告や相談はこの部長に対して行い、
伊原さんはこの部長から、報告を受ける。

「これから着任までの間は、水面下で動いてもらうことになる」
伊原さんはもう頃合いだろうと、ようやく話を引き取り、
具体的な動き方については、担当部長からの指示を待て、と
この面談を締めくると同時に、席を立った。
山崎部長が僕に何かを言いかけたようだったが、
「一本、付き合え」
という伊原さんの言葉がそれを阻み、
僕はそのことになんとなく、救われた気分だった。
どんなに山崎部長が心温かく励ましてくれたところで、
事態は変わらないし、何も救われない。
今にして思えば、八つ当たりだったと反省している。

一本付き合え、というのは、
喫煙ルームで煙草を一本一緒に吸う、ということで、
プライベートでも仕事でも、何やら意味深な会話に相手を呼び出す際、
愛煙家の間でよく使われる言い回しだ。
意味深と言っても、喫煙ルームはオープンスペースなので、
本当に内密を要する話ができるわけじゃないが、
喫煙ルームの一画で、何やら難しい顔をして煙草をふかす集団、
というのは、比較的よく見かける光景だ。

応接フロアの喫煙ルームは、時間帯によっては閑散としている。
伊原さんの後について入ると、先客が一組あったが、
知らぬ者のない伊原さんの姿に、
さりげなく、しかし急いで喫煙ルームを出て行った。

しばらくは、空気清浄機の音だけが聞こえていた。
僕は高層階からの眺めをぼんやり見ていたが、
この沈黙が、今なら言いたいことを言ってもいい、という
暗黙の許可だと分かっていた。
一方で、本当に何を口にしてもいい場所でないことくらい弁えている僕は、
「どうして僕なんですか」
という、割りに素直な質問を投げてみた。

伊原さんは僕の目を正面すこし上からまっすぐ見下ろすと、簡潔に一言、
「お前は、クリーンだからだ」
と、言った。


DATE: 2015/12/16(水)   CATEGORY: 未分類
善意の罪深さと、屈折の後暗さ。
その時、山崎部長は伊原さんの隣で、
穏やかな中にも、どこか落ち着かなげな表情を時折、浮かべていた。
それは、澱みなく説明する伊原さんとは対照的で、
言葉を差し挟むタイミングを掴みかけては逸する様は、
もどかしさを感じてしまうほどの、奥ゆかしさだった。

通常よりも早い内示だったのは、
着任する以前の下準備に時間を要するからで、
早いからといって、受諾そのものを検討する猶予が与えられたわけではない。
第一、内示拒否は就業規則違反だ。

僕は何も、断れるものなら断りたいと本気で思っていたわけじゃない。
伊原さんのことだ。
僕のためにどこかから、
強奪してきた良い球なんだろうということは、分かっていた。
その頃はもう、彼の退職は決定事項となっていたから、
本当は彼に任せたかった仕事を仕方なく、ではないことも分かっている。
彼が担当するほど難しくはなく、
僕が担当するには、端から無理というほどではないにしても重い。
だから、タオルを投げる事態も想定しつつ、
伊原さんは僕に、この球を投げてよこした。

「そうか、伊原君は君のメンターだったね」
山崎部長の言葉に、僕は少し苛立った。
ようやく掴んだ発言の機会に、よりによってそれか、
という落胆めいた気持と、そのことと今回の人事が、
無関係ではないと、冷静に看破されたことへの後ろ暗さ。
山崎部長に悪意はないと分かっていたが、
それだけに、罪深い発言だと感じてしまったのは、
僕なりの屈折だ。

タオルを投げられるかもしれない、そんなミッションを与えられることを、
依怙贔屓とは言わないかもしれないが、
少なくとも同期からは、そう思われるだろうことは僕にも分かっていた。
それでなくとも、彼とは違って意味で、
伊原さんから目を掛けられていることを、羨む同期は大勢いた。
どういう意図で人事がメンター制度の組合せを考えたのかは分からないが、
「当たり籤を引いた」という言い方を、今でもされることがある。

そうじゃないと言い張るつもりは毛頭ないのだが、
依怙贔屓されているから今の評価があるわけじゃない、と
主張したくなるくらいの意地は、僕にだってある。
そういう僕の鬱屈した感情を伊原さんは知っているから、
隣の山崎部長に無感情な一瞥を送り、
また僕に視線を戻した。

DATE: 2015/12/15(火)   CATEGORY: 未分類
誰の頭の片隅に、いつもあるタオル。
タオルを投げる、というのは僕の会社でしばしば用いられる表現だ。
一言でいえば強制的な担当変更なのだが、
ミッション達成が能力的に難しいから変更、という時には使わない。
それ以上ミッションを担当させると、
当人が精神的、あるいは肉体的に甚大なダメージを受けかねない、
そう上司が判断した際の担当変更を、タオルを投げると言う。
たとえ本人が続投を希望したとしても、
能力的に達成の可能性があったとしても、関係ない。
タオルを投げられたらもう、リングを降りるしかない。
ボクシングでセコンドがタオルを投げ込む、
それがまさに語源であり、意味も同様だ。

管理職にならなくても、後輩を持った段階で、
自分がタオルを投げる側に立ったと自覚する。
そして会社にいる限り、どれほど職級が上がっても、
常に誰かからタオルを投げられる可能性は続く。
たとえCEOであっても、それは変わらない。

けれど、タオルを投げられることを望むものは、
僕が知る限り、この会社にはいない。
ある種の労わりであり、保険であり、安全策なのだが、
誰もそれを、好みはしない。
こういう感覚を持つ世代の、僕は最後尾なのかもしれないが、
これは、ビジネスマンとしての意地と誇りの問題だ。
タオルを投げられることのないよう、
ただそれだけを、僕たちは頭の片隅で常に意識し、恐れている。

幸い僕はまだ、タオルを投げられたことはない。
投げるかどうかの判断を下すための、探りを入れられたと感じたことはあるが、
ギリギリ、かどうかは分からないが、その時もタオルなしで遣り果せた。
しかし、サラリと伊原さんが説明した重い状況に、
もしかしたら今回こそ、タオルを投げられるかもしれないと感じた。
そして、うまく説明はできないが、
伊原さんからだけはどうしても、タオルを投げられたくはない、
僕はそう考えていた。

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